サイエンス

ナノスケールの不均質状態を見る

さまざまな機能性物質や、複雑な生命現象が発現するメカニズムは、個々の化学結合の結果としての原子配列からさらに大きなスケールへと階層的に広がる「構造」と、様々な物理的・化学的性質をつかさどる「電子状態」に端を発しています。

多くの物質や生命体では、構造と電子状態がナノスケールで不均質であり、その機能がミリeVのスケールのエネルギーによって制御されることが明らかになりつつあります。

KEK放射光は、構造と電子状態を観察するのに適した100eVから10keVのエネルギー領域を中心的にカバーし、10nm以下の空間分解能と10meV以下のエネルギー分解能を日常的に実現できる、世界最先端の放射光施設を目指します。

KEK放射光で見えるもの

- 空間分解能:10 nm以下

数nmの細かい構造を見分けることができ、不均質な物質の構造と機能を解析することが可能になります(下図)。また、ナノビームが実現できるため、大きな結晶を作りにくい膜タンパク質などの構造解析も可能になります。

- エネルギー分解能:10 meV以下

可視光の「色」に相当する光のエネルギーは、物質を構成する個々の原子を見分けるパラメーター。個々の原子のわずかな状態(化学結合、電子状態など)の違いを見分けることができます。

- 検出限界:ppb (10-9)

機能性物質では、ほんのわずかに含まれる元素によって性質が大きく変わることがあります。ppbの微量元素を検出します。

orderd
これまでの放射光実験。波面がバラバラな光(インコヒーレント光)で、規則正しく配列した試料(=結晶)を観ていた。
disorderd
KEK放射光では、コヒーレントな光(波面の揃った光)が得られるため、不均質な試料を観測できる。

フロンティアを目指すサイエンスの協働場

KEK放射光は、物質・生命科学のフロンティアを目指すために、大学、研究機関、企業などの研究者と施設のスタッフが連携する「協働場」となります。フロンティアで開拓された新しい技術や手法は、多くの分野で共有できるように多様なビームラインの設置にも活用され、高度な汎用的利用を可能にします。

サイエンスの協働場